ジュリアン・ラージとは?現代ジャズギター最注目の天才を紹介

ジュリアン・ラージ|ジャズギター ミュージシャン紹介

「いま最も注目すべきジャズギタリストは誰か」と問われたら、多くのファンや評論家が真っ先に名前を挙げるのがジュリアン・ラージ(Julian Lage)です。5歳でギターを手にし、幼くして「神童」と呼ばれた早熟の才能。歪みをほとんど使わないクリーンで歌心あふれるトーンを武器に、ジャズを軸としながらフォークやカントリー、アメリカン・ルーツまで軽やかに横断する、現代ジャズギター最注目の存在です。

当ブログではウェス・モンゴメリーとは?(人物紹介記事)をはじめ、歴史に名を残す名手たちを紹介してきましたが、今回は「現在進行形」のアーティスト。日本語のまとまった情報がまだ少ない人だからこそ、じっくりご紹介します。

基本プロフィール

項目 内容
本名 ジュリアン・プライス・ラージ(Julian Price Lage)
生年 1987年12月25日(存命・現役)
出身 アメリカ・カリフォルニア州サンタローザ
楽器 ギター(近年はテレキャスター・タイプのエレキが中心)
主な活動期 2000年頃〜現在

現在はニューヨークのニュースクール大学(The New School)で教鞭も執っています。

経歴

神童と呼ばれた少年時代

1987年、カリフォルニア州サンタローザに生まれたラージは、5歳でギターを始めます。8歳のときには短編ドキュメンタリー『Jules at Eight』の主役となり、幼少期にはカルロス・サンタナとの共演も経験したと伝えられます。2000年には、弱冠12歳で第42回グラミー賞授賞式のステージで演奏。15歳でスタンフォード・ジャズ・ワークショップの講師に迎えられるなど、幼い頃から「実年齢をはるかに超える成熟」と評されてきました。

見逃せないのが、幼い頃にジム・ホールの演奏に触れて「これをやりたい」と決意したというエピソード。ジム・ホールとは少年時代から交流が続き、直接気にかけてもらっていたといいます。

プロとしての歩み

サンフランシスコ音楽院などで学んだのち、2008年にバークリー音楽大学を卒業。ヴィブラフォン(鉄琴に似た打楽器)の巨匠ゲイリー・バートンに見出され、アルバム『Generations』(2004年発売)などに参加します。2009年には『Sounding Point』(EmArcy)でリーダー・デビュー。同作はグラミー賞のベスト・コンテンポラリー・ジャズ・アルバム部門にノミネートされ、鮮烈なスタートを切りました。

その後『Arclight』(2016年発売)でエレキ・トリオ路線へ転換し、2021年には名門ブルーノートと契約。同年発売の『Squint』を皮切りに、『Speak to Me』(2024年3月発売)、最新作『Scenes from Above』(2026年発売)と快進撃を続けています。さらに2026年6月には、ボブ・ディランのツアーバンドにギタリストとして加入(ダグ・ランシオと交代)というビッグニュースも。恒久的なメンバーか一時的な代役かは現時点で未確定ですが、ジャズの枠を超えて注目が広がっています。

音楽的特徴

ラージの最大の魅力は、歪みを抑えたクリーン・トーンで「歌う」ことです。ネックポジション(ネック側のピックアップ)主体の温かく丸い音色で、一音一音をメロディとして響かせます。技巧をひけらかすタイプではなく、聴き終えたあとに曲そのものが記憶に残る——即興だけでなく「ソングクラフト(曲作り)」の高さが繰り返し評価されるゆえんです。

サウンドの系譜としては、ジム・ホールやパット・メセニーのアトモスフェリック(空気感を重視した)な流れを汲みつつ、チャーリー・クリスチャンジャンゴ・ラインハルトといった源流への傾倒も公言しています。ジャズを核に、アメリカン・ルーツ、フォーク、カントリー、スパニッシュ・ギターまで自然に取り込む懐の深さも特筆もの。近年はホルヘ・ロエデル(ベース)、デイヴ・キング(ドラム)とのトリオが活動の基軸です。

おすすめアルバム

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『Squint』(2021年)

入口の1枚として迷わず推したい名盤が、ブルーノート移籍第1作『Squint』です。ホルヘ・ロエデル、デイヴ・キングとのトリオによる全11曲で、オリジナル中心ながら、名曲「Emily」(ジョニー・マンデル作曲)などのカヴァーも収録。プロデュースは妻でシンガーソングライターのマーガレット・グラスピー(アーマンド・ハーシュと共同)が務めました。DownBeat誌が「ブルーノートの伝統を現代的に捉え直した一枚」と評したとおり、クラシックなスタイルへの敬意と、前を向いた即興が同居する快作。あのクリーン・トーンの歌心を味わうなら、まずここからです。

『Squint』が気に入ったら、盟友ビル・フリゼールが参加した『View with a Room』(2022年発売)、名プロデューサーのジョー・ヘンリーと組んだ『Speak to Me』(2024年発売)へ。アコースティック一本の世界を味わいたい方には、ソロ作『World’s Fair』(2015年発売)もおすすめです。

使用機材

※機材はツアーや時期によって変わるため、あくまで近年の傾向としてご覧ください。

メインギターは、スペインの製作家ナチョ・バニョスによるテレキャスター・タイプ「Nachoguitars 1657」、通称ナチョキャスター。サフラン色のボディのネック側にP-90サイズのEllisonicピックアップを載せ、本人いわく「ネックポジションからほぼ動かさない」とのこと。ほかにCollingsのシグネチャーモデル(470 JL)、1955年製とされるレスポールなどを使用しています。

アンプは『View with a Room』のツアーではMagic AmpsのVibro Deluxeを使用し、かつては低出力のヴィンテージFenderを愛用していました。足元はStrymon Flint(リバーブのみ使用)とShin-eiのプリアンプ、チューナーだけという極めてミニマルな構成。「テレキャスターはとても正直な楽器」という本人の言葉どおり、ごまかしの利かないセッティングで勝負するスタイルです。

影響・評価

最大の影響源は、少年時代から交流のあったジム・ホール。そこにパット・メセニー、さらにチャーリー・クリスチャンやジャンゴ・ラインハルトという源流への敬意が重なります。キャリアの入口では、ゲイリー・バートンとジム・ホールという二人の巨匠が彼を引き上げました。

評価の面では、2026年時点で「7度のグラミー賞ノミネート」のアーティストとして紹介されるまでに。神童から出発し、いまや「ジャズの真の革新者の一人」と目される存在です。ボブ・ディランのバンドへの参加は、その評価がジャズの外側にまで届いていることの証と言えるでしょう。

まとめ

ジム・ホール直系の歌心を受け継ぎながら、テレキャスター1本でジャンルの壁を越えていくジュリアン・ラージ。ジャズギターの「いま」を知りたい方にとって、これほどわくわくする存在はいません。まずは名盤『Squint』で、あのクリーン・トーンの歌に耳を澄ませてみてください。

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