ジョン・スコフィールド(John Scofield)は、1951年生まれのアメリカのジャズギタリストです。マイルス・デイヴィスのバンドで世界的な知名度を得て、ビバップ(1940年代に生まれたモダンジャズの即興スタイル)の語彙とブルースやファンクのグルーヴを融合した独自のプレイで知られています。ウェス・モンゴメリーとは?(人物紹介記事)で紹介したウェスが1960年代のジャズギターを象徴する存在だとすれば、スコフィールドは1980年代以降のエレクトリック・ジャズを牽引してきた存在といえるでしょう。グラミー賞を3回受賞し、70代の現在も第一線で活動を続けています。
基本プロフィール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本名 | ジョン・スコフィールド(John Scofield)。愛称は「スコ(Sco)」 |
| 生没年 | 1951年12月26日生まれ(存命) |
| 出身 | アメリカ・オハイオ州デイトン生まれ、コネチカット州ウィルトン育ち |
| 楽器 | エレクトリックギター(メインはセミアコのIbanez AS200) |
| 主な活動期 | 1974年頃〜現在 |
経歴
バークリーからプロの世界へ(1951〜1977年)
1951年にオハイオ州デイトンで生まれ、コネチカット州ウィルトンで育ちました。11歳の頃にロックやブルースに影響を受けてギターを始め、1970〜73年にバークリー音楽大学で学びます。1974年、ジェリー・マリガンとチェット・ベイカーのカーネギー・ホール公演のライブ録音に参加し、実質的なレコードデビューを果たしました。1975〜77年頃にはビリー・コブハムとジョージ・デュークのフュージョンバンドに約2年間在籍。さらにチャールズ・ミンガスのアルバム『Three or Four Shades of Blues』(1977年)の録音にも参加し、同時期にパット・メセニーの後任としてゲイリー・バートンのカルテットに加わっています。
リーダー活動の開始とマイルス・バンド(1977〜1985年)
1977年には初のリーダー作を発表し、1978年頃からバンドリーダーとして国際的な活動を始めます。1979年にはスティーヴ・スワロウ(ベース)、アダム・ナスバウム(ドラム)とトリオを結成しました。そして最大の転機となったのが、1982年から約3年半に及ぶマイルス・デイヴィスのバンドへの在籍です。『Star People』『Decoy』『You’re Under Arrest』の3作に演奏と作曲の両面で貢献し、世界的な知名度を獲得しました。
ファンクと正統派ジャズの二刀流(1984〜1997年)
マイルス在籍中から『Electric Outlet』(1984年)、『Still Warm』(1985年)を発表し、その後はデニス・チェンバース(ドラム)らとのバンドで『Blue Matter』(1987年)、『Loud Jazz』(1988年)などファンク色の強い作品を連発します。1990年代に入るとブルーノートから『Time on My Hands』(1990年)、『Hand Jive』(1994年)、『Groove Elation』(1995年)などを発表し、ストレートアヘッドなジャズギタリストとしての評価も確立しました。
『A Go Go』以降の越境と現在(1998年〜)
1998年、メデスキ・マーティン&ウッド(MMW)と共演した『A Go Go』(Verve)を発表。ジャムバンド世代のリスナーを獲得する大ヒットとなり、キャリア後半の方向性を決定づけました。その後も『Überjam』(2002年)でドラムンベースの要素を導入するなど実験を続け、『Past Present』(2015年)で2016年グラミー賞最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・アルバムを受賞、『Country for Old Men』(2016年)では2017年に同部門と最優秀即興ジャズソロの2冠に輝きます。2020年からはECMレーベルに移り、『Swallow Tales』(2020年)、初のソロギター作『John Scofield』(2022年)、トリオによる2枚組『Uncle John’s Band』(2023年)を発表。ニューヨーク大学で教鞭を執ってきた教育者の顔も持ちながら、70代の現在も精力的にツアーを続ける現役プレイヤーです。
音楽的特徴
ビバップの語彙×ブルース/ファンクのグルーヴ
スコフィールドの最大の個性は、ジャズの高度なハーモニー感覚を、ブルースやファンク由来の粘っこいタイム感で弾くことです。コードトーンの外側を這うようなクロマチック(半音階的)なアウトフレーズを多用しながらも難解に聞こえないのは、土台に身体的なグルーヴがあるからです。彼の音楽はしばしば「ジャズ、フュージョン、ファンク、ブルース、ソウル、ロックのブレンド」と要約されます。
1音でわかる「歌う」セミアコトーン
セミアコースティックギター(空洞のボディ中央にブロック材を持つタイプ)に軽いディストーションを薄くかけた、太くエッジのあるトーンも代名詞です。ベンドやビブラート、スライドを多用したボーカルのようなフレージングと相まって、「1音でスコフィールドと分かる」といわれる音色を生み出しています。
バンドで踊らせるグルーヴ志向
『A Go Go』以降は、リフとグルーヴを軸にした曲作りが顕著です。ソロ偏重ではなく「バンド全体で踊らせる」発想は、MMWやガヴァメント・ミュールらジャムバンド勢との越境コラボにもつながり、1990年代末以降のジャズとジャムシーンの接近を象徴する存在となりました。
おすすめアルバム
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『A Go Go』(1998年、Verve)
まず1枚選ぶならこれです。1998年にVerveから発売され、ニューヨークのAvatar Studioなどで録音されました。共演はジョン・メデスキ(キーボード)、クリス・ウッド(ベース)、ビリー・マーティン(ドラム)=メデスキ・マーティン&ウッド(MMW)で、彼らとの初共演盤にあたります。全曲がスコフィールドのオリジナルで、表題曲 “A Go Go” や “Chank”、”Southern Pacific” など、MMWのルーズで実験的なグルーヴの上を歪んだセミアコが自由に泳ぐ快感は、まさにジャズファンクの決定盤です。難解さがなく、ジャズ入門者にもファンク好きにも勧めやすい「入口」の1枚です。
他のおすすめとしては、まず『Still Warm』(1985年)。マイルス・バンド離脱直後の代表作で、80年代フュージョン期のスコ・トーンの完成形といえる1枚です。『Time on My Hands』(1990年)はジョー・ロヴァーノ、チャーリー・ヘイデン、ジャック・ディジョネットとの正統派カルテット作で、ジャズ側の代表作です。近作では『Uncle John’s Band』(2023年)が、自作曲に加えボブ・ディランやグレイトフル・デッドの曲までを消化する、70代の現在地を示す充実のトリオ2枚組です。
使用機材
メインギターは、1981年製のセミアコースティックギターIbanez AS200です。1982年頃のツアー中にIbanezから提供されて以来、40年以上にわたって使い続けているとされ、同社からはシグネチャーモデルのJSMシリーズも発売されています。アンプはVox AC30(リイシューのAC30TBを好むとされます)とMesa/Boogie Mark Iリイシューが軸とされ、歪みの核になっているのがディストーションペダルのPro Co RATです。セミアコ+AC30+RATという意外にシンプルな組み合わせが、あの唯一無二のトーンの土台とされています。
ただし機材は時期により変動があるため、上記はあくまで代表的な組み合わせと考えてください。近年の取材では、ルーパーやフィルター系エフェクトを加えた実験的なセットアップも紹介されています。
影響・評価
スコフィールドは、パット・メセニー、ビル・フリゼールと並んで「現代ジャズギター三大巨頭」と称されることの多いギタリストです(通説としてよく引用される言い回しです)。マイルス・デイヴィス門下の「卒業生」として1980年代以降のエレクトリック・ジャズを牽引し、ビバップの知性とブルース/ファンクの身体性を等価に扱うスタイルは、後続のジャズ〜フュージョン系ギタリストに広く影響を与えました。ジョン・メイヤーなど他ジャンルのギタリストからも敬愛されています。また『A Go Go』以降のMMW、フィル・レッシュ、ガヴァメント・ミュールらとの協働により、ジャズとジャムバンド・シーンの橋渡し役を果たした点も歴史的な功績です。グラミー賞3回受賞、フランス芸術文化勲章(2010年)など制度的な評価も確立しています。
まとめ
ジョン・スコフィールドは、ジャズの知性とファンクの身体性を1本のセミアコで両立させてきた、現代ジャズギターを代表するギタリストです。マイルス・バンドからジャムバンドシーンまで、時代ごとに活動の場を広げながら、常に「1音でわかる」個性を保ち続けてきました。まず聴くなら、MMWとの共演でジャズファンクの決定盤となった『A Go Go』(1998年)がおすすめです。そこから80年代の『Still Warm』、90年代の『Time on My Hands』、最新のECM期へと聴き進めれば、キャリアの全体像がつかめるはずです。



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