ギラッド・ヘクセルマンとは?歌心と浮遊感で現代ジャズギターを更新する名手

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リバーブを活かした透明感のあるクリーントーンと、人の歌声のように歌うメロディ。ギラッド・ヘクセルマン(Gilad Hekselman)は、イスラエルからニューヨークへ渡り、現代ジャズギターの最前線を走り続けるギタリストです。ジュリアン・ラージらと並んで現代ジャズギターを牽引する世代の代表格とみなされ、オクターバーやシンセ的なエフェクトも恐れず取り込むサウンドは、世界中のギタリストから注目されています。この記事では、その経歴・音楽的特徴・年代順のおすすめアルバムをまとめて紹介します。

基本プロフィール

項目 内容
名前 ギラッド・ヘクセルマン(Gilad Hekselman)
生まれ 1983年、イスラエル・クファル・サバ生まれ
拠点 ニューヨーク(2004年に移住)
楽器 ギター(ほかにキーボード、ベースも演奏)
主な活動期 2000年代半ば~現在

経歴

ピアノからギターへ——イスラエルでの出発

1983年、イスラエルのクファル・サバに生まれます。6歳でクラシックピアノを始め、9歳でギターに転向。公式バイオによれば、12~14歳の頃には週刊の子供向けテレビ番組のハウスバンドで定期的に演奏し、早くからステージ経験を積んだそうです。15歳頃に名門テルマ・イェリン芸術高校に入学し、18歳でジャズ科を優秀な成績で卒業しました。幼少期のピアノ経験は、のちの豊かな和声感覚の土台になっています。

ニューヨーク進出とモントルー優勝(2004~2006年)

2004年、アメリカ・イスラエル文化財団の奨学金を得てニューヨークへ移住し、ニュースクール(The New School for Jazz and Contemporary Music)で学びます(2008年に学士号を取得)。転機は2005年7月。スイスのギブソン・モントルー・ジャズフェスティバル国際ギターコンペティションで優勝し、一躍注目を集めました。翌2006年には初リーダー作『Splitlife』を発表し、同年のモントルー・ジャズ祭ではパコ・デ・ルシアの前座も務めています。以後、アリ・ホーニグ、アナット・コーエン、マーク・ターナーといったニューヨークの一線級ミュージシャンと共演を重ねていきました。

評価の確立(2011~2018年)

2011年に『Hearts Wide Open』、2015年にトリオ作『Homes』を発表し、ニューヨークで最も有望なギタリストの一人としての評価を固めていきます。2017年にはダウンビート誌批評家投票のライジング・スター(ギター部門)で第1位に選出。2018年には自身のレーベルHexophonic MusicとMotémaの共同で、gHex TrioとZuperOctaveという二つのバンドを収めた意欲作『Ask for Chaos』を発表しました。同年、ケネディ・センターで行われたパット・メセニーのNEAジャズ・マスターズ授賞式でも演奏しています。

2020年代——宅録から生まれた代表作、そして現在

2020年にはウィル・ヴィンソン、アントニオ・サンチェスとの共同名義作『Trio Grande』を発表。同年からのパンデミック下では、テルアビブとニューヨークの自宅スタジオにこもり、多重録音による新作制作に取り組みました。その成果が、2022年に英Edition Recordsから発表され高い評価を得た『Far Star』です。その後もライブ盤『Life, at the Village Vanguard』(2024年)、ラリー・グレナディア、マーカス・ギルモアとの『Downhill From Here』(2025年)と作品を発表し続け、現代ジャズギターの最重要人物の一人として活動しています。

音楽的特徴・スタイル

ヘクセルマンの演奏の特徴は、次のように整理できます。

  • 歌うようなクリーントーン——リバーブを活かした透明で浮遊感のある音色。ギターでありながら、人の歌声のようなリリシズムを持ちます。
  • 「歌心」重視のインプロヴィゼーション——技巧の誇示よりも、メロディと感情の起伏を優先するスタイル。JazzTrail誌は「モダンでキャッチー」と評しています。
  • ピアニスティックな和声感覚——ピアノ出身ならではの豊かなハーモニー。ベースライン・和音・メロディを同時に紡ぐ独奏アプローチも得意で、ZuperOctaveではギターとベースを一人で担当します。
  • テクノロジーを恐れない音作り——オクターバーやシンセ的エフェクトを積極的に活用し、エレクトロニカやヒップホップの質感をジャズに融合させます。
  • ジャンルレスな作編曲——ポストバップを基盤に、フォーク、ブラジル音楽、アフロビートまで越境するセンスを持ちます。

代表アルバム

年代順に代表作を紹介します。『Splitlife』(2006年、Smalls)はニューヨーク移住後まもなく録音されたデビュー作。『Hearts Wide Open』(2011年、Le Chant du Monde)は評価を確立した初期代表作です。『Homes』(2015年、Jazz Village)はトリオでの到達点と評される一枚で、『Ask for Chaos』(2018年、Hexophonic Music/Motéma)はgHex TrioとZuperOctaveの2バンド制による意欲作。キャリアの流れをつかむなら、この順に聴いていくのがおすすめです。

『Far Star』(2022年発売)

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まず1枚選ぶなら、これ。パンデミック下の自宅で、ギター・ベース・キーボードを自ら多重録音して作り上げたアルバムで、エレクトロニカやアフロビートの質感まで溶け込ませたサウンドは「最高傑作」との呼び声も高い代表作です。制作背景や全8曲の聴きどころは『Far Star』徹底解説記事で詳しく紹介しています。

影響・評価

2004年のニューヨーク進出以来、「最も有望なギタリストの一人」と評されてきたヘクセルマン。2005年のギブソン・モントルー国際ギターコンペティション優勝、2017年のダウンビート誌批評家投票ライジング・スター(ギター部門)第1位(公式バイオによれば2022年にも同部門で1位)と、実績も折り紙付きです。共演歴もアリ・ホーニグ、マーク・ターナー、クリス・ポッター、ジョン・スコフィールド、エスペランサ・スポルディングと幅広く、シーンからの信頼の厚さがうかがえます。

浮遊感のあるトーンと歌心、そしてテクノロジーを恐れない音作りによって、パット・メセニー以降のモダンジャズギター像を更新した存在と位置づけられており、カート・ローゼンウィンケルやジュリアン・ラージとともに、現代ジャズギターを語るうえで欠かせない名前になっています。

まとめ

クラシックピアノで音楽を始め、モントルーの国際コンペ優勝を足がかりにニューヨークで頭角を現したギラッド・ヘクセルマン。歌うようなトーンと、ジャンルを越えていく好奇心は、キャリアを重ねた現在も進化を続けています。入門には代表作『Far Star』が最適。透明なギターの音色に乗って、「遠い星」への音の旅を体験してみてください。

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