ラーゲ・ルンドとは?現代ジャズギター最高峰の経歴・スタイル・おすすめ名盤を解説

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2005年のセロニアス・モンク国際ジャズ・ギター・コンペティションを制した、ノルウェー出身のギタリスト、ラーゲ・ルンド。速弾きや音数で圧倒するタイプではなく、浮遊感のあるハーモニーと「間」を活かした静かな演奏で、カート・ローゼンウィンケル以降の世代を代表する現代ジャズギターの名手と目されています。この記事では、ラーゲ・ルンドの経歴と音楽的な特徴、そして代表作『Terrible Animals』をはじめとするおすすめアルバムを紹介します。

基本プロフィール

項目 内容
名前 ラーゲ・ルンド(Lage Lund)
生年 1977年12月12日(1978年とする資料もあり)
出身 ノルウェー(テレマルク県シーエンで育つ)
楽器 ギター
主な活動期 1990年代後半~現在

経歴

スケートボードからギターへ――ノルウェー時代

1977年、ノルウェーに生まれ、テレマルク県のシーエンという町で育ちました。少年時代の夢は意外にもプロのスケートボーダー。13歳の頃にその夢を断念し、代わりに打ち込むようになったのがギターだったと伝えられます。上達は早く、10代のうちに地元でジャズトリオを結成し、クラブで演奏するようになりました。

バークリーからジュリアードへ(1990年代後半~2003年)

高校卒業後、奨学金を得て米ボストンのバークリー音楽大学へ留学。ジャムセッションの名所として知られる「ウォーリーズ・カフェ」に足繁く出演し、実戦で腕を磨きます。2002年にはフルブライト財団の奨学金を得てニューヨークへ移住。翌2003年、ジュリアード音楽院のジャズ科に全額奨学金で入学しました。同科がギタリストを迎えたのは、これが史上初のことです(「初のエレクトリック・ギタリスト」とする紹介もあります)。

モンク・コンペティション優勝(2005年)

2005年にジュリアードを修了。同年9月19日、ケネディ・センターで開催されたセロニアス・モンク国際ジャズ・ギター・コンペティションで優勝し、一躍世界の注目を集めます。賞金は2万ドル。審査員にはパット・マルティーノ、ビル・フリゼール、ラッセル・マローン、ジョン・ピザレリ、アール・クルー、スタンリー・ジョーダンという錚々たる顔ぶれが並びました。ノルウェー人ギタリストによる快挙であり、審査員を務めたマローンは「彼はすべてが音楽で、すべてが魂だ」と絶賛しています。

クリス・クロスの看板ギタリストへ(2008年~2015年)

2008年、オランダの名門ジャズレーベル、クリス・クロス(Criss Cross Jazz)から『Early Songs』でリーダー・デビュー。以後『Unlikely Stories』(2010年)、『Foolhardy』(2013年)、『Idlewild』(2015年)と同レーベルでコンスタントにリーダー作を発表し、看板ギタリストとしての地位を固めていきます。2013年には、オーランド・ル・フレミング、ウィル・ヴィンソンとの「OWLトリオ」でも作品を発表しました。

また2014~2015年には、マリア・シュナイダー・オーケストラのギター奏者として『The Thompson Fields』(2015年)の録音に参加。同作はグラミー賞「ベスト・ラージ・ジャズ・アンサンブル・アルバム」を受賞しており、サイドマンとしての信頼の厚さがうかがえます。

『Terrible Animals』と近年の活動(2019年~)

2019年、サリヴァン・フォートナー(ピアノ)、ラリー・グレナディア(ベース)、タイショーン・ソーリー(ドラム)との新カルテットで『Terrible Animals』を発表。作曲面でも最も野心的な作品と評され、代表作となりました。2020年代に入ると、サックスの名手マーク・ターナーやマット・ブリュワーらとのバンド「The Fury」を率いるほか、メリッサ・アルダナのBlue Note作品にも参加。2023年には『Most Peculiar』と『Ashes』の2作を発表するなど、現在も第一線で活動を続けています。ダウンビート誌批評家投票の「ライジング・スター(ギター部門)」に選出された経歴もあります。

音楽的特徴・スタイル

ラーゲ・ルンドの魅力は、テクニックの誇示ではなく「響き」と「間」の設計にあります。特徴を整理すると次のとおりです。

  • 浮遊感のあるハーモニー…高度なリハーモナイズ(コードの置き換え)と曖昧な響きのヴォイシングで、コード進行の上に霧がかかったような独特の空間を作ります。
  • 知的で意外性のあるライン…長いフレーズの中に、予測を裏切るインターバルの跳躍や着地点を織り込む、思索的なインプロヴィゼーション。
  • 抑制の美学…音数と音量を抑え、間(スペース)を活かした囁くような演奏。
  • 温かいトーンとさりげないエフェクト…ペダルやエフェクトを飛び道具としてではなく、音色の一部として溶け込ませます。
  • 作曲家としての比重の大きさ…近作はほぼ全曲がオリジナル。コンポジション主導の現代的なカルテット/トリオ音楽を追求しています。

ニューヨーク・タイムズが彼の寡黙な佇まいを「whisper-quiet mystique(囁くように静かな神秘性)」と評したように、多くを語らず、それでいて強い存在感を残すタイプのミュージシャンです。

代表アルバム

リーダー作はクリス・クロスを中心に発表されています。ここでは年代順に4枚を紹介します。

『Early Songs』(2008年)

クリス・クロスからのリーダー・デビュー作。モンク・コンペティション優勝から3年後に発表された1枚で、以後長く続く同レーベルとの関係の出発点となりました。

『Idlewild』(2015年)

トリオ編成による録音。音数の少ない編成だからこそ、ルンドのハーモニー感覚と間の使い方をじっくり味わえる作品です。

『Terrible Animals』(2019年)

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まず1枚選ぶならこれ。サリヴァン・フォートナー、ラリー・グレナディア、タイショーン・ソーリーとのカルテットによる、全曲オリジナルの代表作です。浮遊するハーモニーと、音色に溶け込むエフェクトを堪能できます。詳しくは『Terrible Animals』徹底解説(アルバム紹介記事)をご覧ください。

『Most Peculiar』(2023年)

フォートナー、マット・ブリュワー、ソーリーとのカルテットによる近作(2022年6月17日録音)。円熟期に入ったルンドの現在地を伝える1枚です。

影響・評価

ルンドは、カート・ローゼンウィンケル以降の世代を代表する、現代ジャズギターの最高峰のひとりと位置づけられています。パット・メセニーが「お気に入りの若手」に挙げたほか、ローゼンウィンケル自身も「若手の中ではラーゲこそが『その一人』だ。実際、怖いくらいだ」と語るなど、同業の巨匠たちからの評価は絶大です。

同世代以降ではギラッド・ヘクセルマンらとともに、ニューヨークの現代ジャズギター・シーンを牽引する存在として語られます。なお、名前が似ているため混同されがちですが、ジュリアン・ラージ(Julian Lage)とは別人。どちらも現代ジャズギターを代表する名手なので、聴き比べてみるのも面白いはずです。

まとめ

モンク・コンペティション優勝という華々しい経歴を持ちながら、その音楽はどこまでも静かで思索的。音数を競うのではなく、響きと間の探求によって「現代ジャズギターの最高峰」の評価を確立したのがラーゲ・ルンドです。まずは代表作『Terrible Animals』から、霧のかかったような美しいハーモニーの世界に足を踏み入れてみてください。

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